ねこ妻:ウサギは飼っていたことがあって、ちょいちょい思い出しながら。でも岩合さんみたいに本物を追いかけられる方とは観察できることが全然ちがう。行ってみたいとは思うんですけど。
──岩合さんは、週刊朝日やアサヒカメラなど様々な媒体で長年連載陣を務めてくださいました。
岩合:一番初めは「アサヒグラフ」で「海からの手紙」を連載させていただいていたから、もう70年代後半からですよ。あのときは、取材費をもらえると思ったらフィルム代しかくれなくて……。
ねこ夫:ありゃ(笑)。
岩合:でも驚いたことに銀行が貸してくれて。28歳から30歳ぐらいまでの3年間の連載でしたけど、写真家としてすごく自信を持つきっかけとなった作品でした。若いときは、当時の写真界で神のように言われていた編集者の方に、「ピントも合ってないし、眼医者行ったらいいんじゃない?」とかさんざん言われましたね。動物が写ってるだけじゃない写真が撮りたくて、10年間模索して。で、10年経ったとき、僕をけなしていた編集者がアサヒグラフの連載を見て、「お前は写真が撮れるようになったな」ってポストカードをくれて。すごくうれしかったです。
──映画「ねことじいちゃん」は岩合さんの初監督作となりましたが、原作となる漫画が生まれた経緯は?
ねこ妻:うちの母が亡くなったのがきっかけなんです。家族で母の思い出を語ったときに、山口県の母の実家から見える海がずっと忘れられないなと思って。それで、海に面した昔の日本の風景を舞台に描こうと。
岩合:瀬戸内海と、山と、のどかな空気。僕も背景は大切にするので、それがすごくよかった印象がありますね。
■“ハル院長”は○○に似ている
ねこ妻:ロケハン大変だったってお聞きしました。
岩合:制作プロダクションの社長と一緒に愛知県の島に行って、ここじゃないな……とか。
ねこ夫:想像も入っているからぴったり合うとこなんてないと思います。一応、愛知県の篠島、日間賀島、佐久島がモデルになっていますけれど、瀬戸内海だろうが、九州だろうが、それぞれの記憶のなかにあるネコがいる場所、みたいな感覚で捉えてもらえればいいのかなと。映画のオープニングで、セリフがほとんどなしで、島の雰囲気を伝えていく場面が続いてたと思うんですけれど、
岩合:ネコに島を案内させていますからね。