ねこ夫:誰かにしゃべらせなくてもカメラワークだけで見せることができるんだって学んで、9巻あたりからはかなり影響を受けていると思います。
ねこ妻:「しっぽのお医者さん」も影響されてるかも。ハル院長(主人公である動物病院の看板ネコ)って、映画で主役のタマを演じたベーコンに近いものがあるなと。オスで顔が大きくて。
岩合:僕好みのネコです(笑)。
──映画を撮るうえで大事にしたことは?
岩合:全シーンにネコを出したい(笑)。どこを切ってもどこかにネコがいる映画にしたくて、プロダクションから40匹ほど連れてきてもらって。
ねこ妻:とにかくネコがいっぱい出てきて楽しめましたよね。しかもすごく生き生きしていて、さすがだなーと。
岩合:でもプロダクションのネコだから木にも登ったことがなくて、木登りのシーンは大変でした。
ねこ妻:箱入りネコちゃんだ(笑)。
ねこ夫:ベーコンもいい演技してましたよね。
岩合:“じいちゃん”こと大吉を演じた立川志の輔さんが、息子役の山中崇さんから「東京で暮らそうよ」って言われるシーンを撮影していたら、志の輔さんが抱いているベーコンがポーンってはねて庭に下りてしまったんです。そのままカメラは回していたんですけど、山中さんが「タマも東京で暮らせるよ」って言ったら、ベーコンが振り返って山中さんの足元に行って、手水鉢にたまっていた水を飲んでくれて。ベーコンのアドリブなのですが、鳥肌が立ちました。この映画の重要な意味がそこで表現できた。島で生まれて育って果てていくっていうのは、ずっと島の水を飲んで暮らしているわけですよ。だから水を飲むことで、この島で生きていくということを表せたんじゃないかなと。
──ねこまきさんも撮影現場を見学されたとか。
ねこ妻:ロケハンのときに一回お邪魔させていただいて。でも本番を撮影されているとき、夫の母親が、私たちになにも言わずにロケ現場に突撃してまして。