ねこ妻:たしかに。
岩合:世の中的には今、イヌ化したネコを求めつつあって、なんでもこちらが思うとおりに動いてくれるネコを求めてしまう。でも、それが裏切られるのがネコであって、そこを愛さなきゃいけない動物だと思います。
──岩合さん/ねこまきさんのこんな作品を見てみたい!という夢はありますか?
ねこ妻:私、「世界ネコ歩き」で、岩合さんの心の声がポロッと出ているときが本当に好きで。こちらも思うことを咄嗟に発せられるのが面白くて。
岩合:下手なこと言えないんですよ、使われちゃうんで(笑)。
ねこ妻:「ここまでがきみのテリトリーかい?」とか、すごく優しいんですよね。それで、ちょっと見てみたいなと思っていたのが、岩合さんがネコを撮影している状態を撮影している作品。
岩合:それは却下します(笑)。視聴者の方はネコを見たいんです。僕も、こういう素晴らしい動物が我々のすぐ間近にいるんだよ、心がポッと温かくなる動物なんだよっていうことを知っていただきたいので、主役はネコであることが大前提。僕はおつまみで出てくるくらいでいんです。出たがり屋ではないのに、なぜか出させられる……。
ねこ妻:みなさんが望まれるから。
岩合:僕、昔、アフリカで作家の山崎豊子さんに言われたことがあって。「岩合さん、カメラマンである以上カメラの前に出てきちゃだめだよ」って。ちょうど『沈まぬ太陽』を書かれていたときですよ。
ねこ妻:わぁ……。
岩合:(作中に)岩合っていう人物が出てくるんですけど、なぜか悪徳企業の社長で。僕、山崎さんに悪いこと一つもしてないのに(笑)。でも本のカバーの太陽の写真は、全部僕の写真なんですよ。あれ印税にしときゃよかったなー、本当に。
一同:(笑)
岩合:あ、僕が見てみたいねこまきさんの作品は、もう単純に、人物が登場しないネコだけの……。
ねこ妻:私もできるならやりたいですよ。
岩合:ヒト抜きの「猿の惑星」みたいなものです。
ねこ妻:ネコの惑星。いいですね、そしたら岩合さんにまた長回しで映画を撮っていただいて!
(構成/本誌・大谷百合絵)
※週刊朝日 2023年6月9日号