「商品の広がりも特筆すべき点で、『免疫力向上』を謳うプラズマ乳酸菌を配合したお茶や紅茶、グミやチョコレートといったお菓子も登場しています。消費者にとって健康食品より身近で取りつきやすく、今後も、健康食品・加工食品を軸に、市場は拡大していくと考えています」(堀越さん)
■ウイルス感染防御機能
キリンが研究するのは「プラズマ乳酸菌」だ。乳酸菌ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)の一種で、キリンホールディングスが2010年に発見。12年には、人間に対してもウイルス感染防御について免疫力が活性化することを世界で初めて確認し、発表。20年8月には、日本初となる免疫機能を追求する機能性表示が受理された。
プラズマ乳酸菌の「プラズマ」は、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)からきている。pDCは主に四つの重要な免疫系の細胞(NK細胞、キラーT細胞、B細胞、ヘルパーT細胞)に指令を出す役割を担う。
「プラズマ乳酸菌はpDCを活性化させ、免疫系細胞を広く活性化させます。臨床・基礎の研究で、インフルエンザウイルス、ロタウイルス、デングウイルスなどに対して高いウイルス感染防御機能があることが報告されています」(キリンホールディングス・コーポレートコミュニケーション部主務・備前沙栄さん)
4月30日、このプラズマ乳酸菌が新型コロナウイルス感染症に罹患した患者の症状を緩和させることが日本呼吸器学会学術講演会で発表された。研究を行ったのは、長崎大学客員教授の山本和子医師(現・琉球大学大学院教授)ら。
それによると、プラズマ乳酸菌を取っている人のほうが、取っていない人より、コロナに罹患した場合の回復(味覚障害の消失、ウイルス量の減少、pDC維持)が有意に優っていた。
残念ながら研究で使われたプラズマ乳酸菌4千億個入りカプセルは市販されていないが、研究成果については特許出願済みだという。
乳酸菌シロタ株を研究するのはヤクルトだ。シロタ株は創始者の代田稔医学博士により1930年に発見、強化培養された株だ。特徴は、生きて腸に到達し、腸内環境を整えること。「ストレス緩和」や「睡眠の質向上」を訴求するYakult1000とY1000は、21年の全国発売直後から話題を呼び、品薄状態が続いている。
「1ミリリットル当たりシロタ株10億個という高密度によって、一時的な精神的ストレスがかかる状況下でのストレス緩和や睡眠の質の向上につながる機能が臨床試験で得られました」(ヤクルト本社広報室の市川弥寿子さん)