2日目、羽生は手段を尽くして逆転の機会をうかがう。しかし藤井は誤らない。最後は藤井が鮮やかに羽生の玉を詰まして、終局を迎えた。
「自分にとって得るものの多いシリーズだったかなと思うので、それを今後、生かしていけたらと思います」(藤井)
王将戦恒例の記念撮影は、うなぎのつかみ取り。玉(王将)をつかまえるのが世界一得意な藤井も、うなぎ相手には苦戦したようだ。
藤井のタイトル通算獲得数は12期。早くも森内俊之九段(十八世名人資格者、52)と並び、歴代8位タイとなった。
19日の棋王戦五番勝負第4局では藤井が渡辺明棋王(38)に勝ち、3勝1敗で棋王位獲得が決まった。タイトル通算13期は佐藤康光九段(永世棋聖資格者、53)と並び、歴代7位タイだ。
4月からは名人戦七番勝負が開幕。藤井は渡辺名人に挑戦する。叡王戦五番勝負では、防衛を目指す藤井が菅井竜也八段(30)の挑戦を受ける。
■次なるドリームマッチ
現代将棋史上、最も多くタイトルを取った棋士は、もちろん羽生である。その数は前人未到の99期。さらにあと1期を積み重ねれば、節目の100期を迎える。今期王将戦では実現はならなかったが、いずれどこかでまた挑戦の機会は訪れるだろう。
「いろいろな変化とか読み筋とかがたくさん出てくるので。そこは対局していて大変なところでもありましたけど。非常に勉強になったところもあったシリーズでした。自分自身の至らないところというか、足りないところを改善して、また次に臨めたらいいなと思ってます」
王将戦閉幕後、羽生は淡々とそう語っていた。藤井との次なるドリームマッチの実現に期待したい。(ライター・松本博文)
※AERA 2023年3月27日号