日本創成会議が5月に発表した「消滅可能性都市896のリスト」は日本中に大ショックを与えた。2040年までに若年女性の減少率が5割を超える自治体、すなわち消滅可能性都市が896。さらに人口1万人を割るであろう都市が523もあるというのだ。増田寛也編著『地方消滅』はそのさらに詳しいレポートである。
 恐ろしい本だ。「少子高齢化」ということは、ずいぶん前から言われてきた。実際、街を歩いていても、老人が増えたなあと感じる。だが、ほんとうの問題は少子高齢化のその先だと本書は言う。子どもが減って老人が増えれば、人口が減る。それも、急激に減る。2050年には人口1億人を割り、今世紀末には5千万人を割る。
 明治時代の人口はそれくらいだったのだから、漱石や一葉の時代に戻ったと思えばいいじゃない、なんて呑気に考えていたのだけれど、事態は深刻だ。
 映画のフィルムを巻き戻すように、ゆっくりと均一に全国の人口が減るわけではない。本書の副題にあるように、東京に若者が吸い寄せられることで、地方の人口は急減していく。少子化による人口減と東京への移動による人口減のダブルパンチが地方を襲う。
 人口が減れば税収も減る。橋や道路も直せなくなるし、公立病院や図書館だって維持できるか。人は荒野の中で生きていけない。住めなくなった街から人は消え、自治体も消滅する。
 だから少子化対策を、と言いたくなるけど、残念ながらそれだけでは焼け石に水だし、効果が出るのはかなり先だ。いちばん必要なのは東京への流入を止めること。東京への人口移動が減れば、ゆっくりとした人口減少、縮小再生産をむかえられるだろう。
 そのためには東京への一極集中をやめることだ。大企業の本社を地方に移せばいいのに、とぼくは思う。たとえば都内の法人税を3倍にして、地方の法人税を半分にするなんてどうか。

週刊朝日 2014年9月19日号