附属小の教員が自殺したという話は、事件から半年も経たないうちに小学校内外に広まった。同時に、「大学はまともに調査をしていないようだ」という噂もあったが、Bさんの死の翌年にあたる2022年度の定期人事異動が発表されると、関係者たちの疑念は一気に膨らんだ。
校長・教頭ふくめ、附属小の教員の3分の1以上にあたる9人が他校に転出したのだ。転出者は例年、数人なので、異例の事態だった。「附属小で何かがもみ消されようとしている、と噂が流れました」(D氏)
実は、Bさんが亡くなった後、大学は附属小の職場環境について現場の教員たちへの聞き取り調査を実施しており、一部の関係者は大学幹部から、調査結果の説明を受けていた。事情を知る人によると、その内容は、
「授業研究会では大量のレポートが課されるため、『ふとんで寝ることができない』と話す新任の先生がいた」
「一生懸命やっているにもかかわらず人格を否定するような言葉をストレートにぶつけられ、傷ついた方もいた」
などというもの。長時間労働やパワハラが蔓延していたことをうかがわせるが、肝心のBさんの死の詳細については一切が伏せられた。
説明をした大学幹部は「自殺だったかどうかは回答しない」「附属小での勤務の在り方を調査しただけで、教員が亡くなったこととの関連は調べていない。これ以上調査すれば、学校組織を壊すことに必ずつながる」と言ったといい、各所から「組織を守るために教員の死を隠ぺいするのか」と憤る声があがっている。
大学の調査報告について、組織内部にいる人はどう思うのか。複数の大学教員に見解を求めたところ、同大教育学部准教授の白石陽一氏は「このような不誠実さやいい加減さを見れば、普通の大人は隠ぺいだと感じる」と非難した。
「教員の自殺を受けて調査を始めたということは、自殺と労働環境の間に因果関係があるかもしれないと判断したからのはず。それにもかかわらず、自殺の理由は調査しないなんて、責任逃れ以外の何物でもない」