大胆な題名だが、嘘ではないのかもしれない。出産や育児に関わる女性や医師からの聞き取りを中心にした本書を読んで思った。
 浮き彫りになるのは妊娠した女性たちの疲弊した現状だ。第一子の出産を機に四割の女性が「出産退職」し、「妊娠解雇」「育児退職」も少なくない。それを恐れ妊娠を先延ばしにすれば、ハイリスクな「高年齢出産」が待つ。「育休三年」で解消する問題とは言えない。
 出産や医療の現場にも根深い歪みがある。産婦人科医や助産師の人手不足、病院の経営重視などから、必要ない「帝王切開」の比率が年々上昇。産業のように「ベルトコンベア化」されたお産に、携わる者も辟易している。病弱な乳幼児のケア、母親の育児放棄や虐待も大きな課題だ。
 根底には、核家族化や職場の理解不足による妊婦の孤立がある。最終章では、デイサービスと保育所を一体化させた施設や子持ちの女性だけが所属する事業部が紹介される。未来を変えるのは、互いの困難を他人事にしない姿勢だ。「産める社会」への道はまだ閉じていないと感じる。

週刊朝日 2013年10月11日号