元職員エドワード・スノーデンによって、米国の国家安全保障局が同盟国に対してすら盗聴を行っていたことが暴露された。もっとも、驚いた人は少ないだろう。「おおかたそんなことだろうと思ってたよ」というのが多くの感想だ。
 覇権国家というのは軍事力と経済力だけでなく、情報の収集と分析力も強大だ。で、その米国の情報機関、米国国家情報会議が編集したのが『2030年 世界はこう変わる』である。日本やEUも含め、世界中を盗聴しまくって集めた情報を分析しているのだから、信頼度は抜群だ。ただし書きぶりは慎重で、ある程度の幅を持った予測となっている。
 多くの日本人は、この本を読んでがっかりするだろう。17年後の未来、日本はいま以上にしょぼい国になっている。アメリカも落ち目。伸びているのはアジアで、しかも中国とインドがすごい。でも、中国もすでに陰りが見えて、いちばんはインドかも……というのが予測である。これも「おおかたそんなことだろうと思ってたよ」というのが正直な感想か。
 中国(だけ)には負けたくない、と思っている日本人も多いだろう。書店の本棚には、中国の破綻を祈願するかのような本がたくさん並んでいる。しかし中国が日本よりも経済的に成長しているのは事実だし、日本が遠からず超々高齢化社会になることも避けられない。
 最近のインドというと、集団レイプ事件などひどいニュースばかり流れてくるが、経済力の伸びはすさまじい。やはり若い人がたくさんいる国は勢いがある。
 もっとも、国家の興亡と国民の幸不幸は必ずしも同じではない。勤めている会社の景気がいいからといって、社員がみんなハッピーだとは限らないように。金持ちの国に生まれても、幸福を実感できない人はたくさんいる。
 日本のことを離れて、地球全体で考えると、水や食糧の危機は深刻だ。17年後も人類は生き延びているのだろうか。

週刊朝日 2013年7月26日号