
バイデン氏は2月24日、米ABCのインタビューに応じ、出馬への意欲を改めて示した。しかし、「選挙戦に入る前に終わらせなければならないことが多くある」と述べ、最終判断と公式表明の時期を見定める意向だ。年齢が80歳であり、2期目を終えるころには86歳となる。再選を目指すのはハイリスクな「賭け」となる。1年あまりに及ぶ選挙戦を戦い切れるのか。バイデン氏は、
「年齢への懸念は当然だ。私が言えるのは私自身を見てほしいということだけだ」
と訴えた。
ファーストレディーのジル夫人は同じく24日、AP通信のインタビューで、バイデン氏の出馬に関して、
「彼は仕事をやり遂げていないと言っている。それは大事なことだ」
と語った。米メディアは、バイデン氏がジル夫人だけでなく、子どもから孫に至るまで、出馬への支持を取り付けたと報じている。
第1の「賭け」は、出馬表明してから選挙まで、堅調な米経済が続くかどうかで決まる。米エコノミストは、景気後退に突入する時期を今年後半から先にずらしてはいる。
そして第2の「賭け」は、外交に強いことを示してウクライナ支援を続け、停戦に持ち込めるかどうか次第だ。
■機密文書問題の「火種」
しかし、経済は連邦準備制度理事会(FRB)がかじ取りを主導し、ウクライナ戦争ではロシアの動きが極めて不透明だ。バイデン氏は、自分では動かせない駒を相手に「賭け」を続けていくことになる。
また、ウクライナ訪問前の今年1月、バイデン氏の自宅やオフィスから、機密文書が発見されるという不祥事にも見舞われた。
オフィスだった「ペン・バイデン・センター」からは、政府文書が約20点、自宅からは6点が見つかっている。バイデン夫妻は全面的に協力しているというものの、司法省の捜査員が家中のバインダー、メモ、ファイル、スケジュール帳、「やることリスト」などを1枚1枚ひっくり返し、13時間もかかったというお粗末ぶりだ。
米キニピアック大学の調査によると、バイデン氏の機密文書問題については、「深刻」とみる回答者の割合が71%(「非常に深刻」39%、「いくらか深刻」32%)だった。また、同氏の機密文書取り扱いが「不適切」とする割合は60%と、かなり高い割合だ。司法省は捜査を終えたとしているが、どこに火種がまだあるのかは分からない。
ウクライナ訪問という大仕事は終わった。次は、停戦交渉の立役者となり、大統領史に名を残したい年齢ではある。しかし、バイデン氏にとって、道のりはかなり険しく、長い。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2023年3月13日号