
バイデン米大統領は戦争中のウクライナを電撃訪問し、世界を驚かせた。しかし、共和党の一部から軍事支援を見直す声が上がるなど、足元は盤石ではない。AERA 2023年3月13日号の記事を紹介する。
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「果たして、バイデンは賭けに出るのか」
米メディアが日々、報道している。それは二つの賭けを示す。2024年大統領選挙への出馬表明をいつするのか、そしてウクライナへの軍事・経済支援をいつ見直すのか──。
ウクライナ戦争1年を前にした2月20日(米国時間)、バイデン氏はウクライナの首都キーウに現れ、ゼレンスキー大統領と親しく語り合った。この1年で293億ドル(約4兆円)以上に上った軍事支援を、さらに進めることも明らかにした。
ポーランドから電車で片道10時間という危険な保秘の旅を決行。この日は独立戦争の英雄で初代大統領のジョージ・ワシントンの誕生日を記念することから始まった「大統領の日」でもあった。英雄を思い出す日に、キーウの青空の下、ゼレンスキー氏と立つ大統領の姿は、バイデン氏は外交に強いとみせるためのホワイトハウスの綿密な戦略が勝利した象徴だった。
■トランプ氏も支援批判
しかし、帰国したバイデン氏には、興奮を冷ます共和党の動きが待ち構えていた。
共和党は、ウクライナ支援をめぐり、かつてない激しい分断に直面している。
トップであるミッチ・マコネル上院野党院内総務など伝統的なタカ派グループは、支援を支持。これに対し、下院を中心にトランプ前大統領の一派である強硬派がウクライナ支援に激しく反対している。軍事支出が大きいことや、内政がないがしろになっているというのが理由だ。
マコネル氏は、FOXニュースに対し、こう発言した。
「世界における米国の強いリーダーシップを共和党が支持しなくなったという報道は、かなり誇張されている」
しかし、24年大統領選でトランプ氏の対抗馬とされるフロリダ州のロン・デサンティス知事でさえ、バイデン氏が内政よりも外交にばかり腐心していると批判している。