三浦大輔も負け越している。開幕投手を務めた試合で0勝7敗。7勝0敗だったら通算でも勝ち越しだったが、「たられば」の話でしかない。14位の別所毅彦は、強い南海と巨人のエースだった。投球回2000以上で史上7位の高勝率である。村田兆治は、座右の銘が「先発完投」のため、それなりに敗戦も伴ったと考えられる。
そして石川雅規だ。現役21年間で優勝が2015年と21年の2度しかないチームにおいて、2ケタ勝利は11度ある。「2ケタ勝利だが2ケタ敗戦」というシーズンは5度あるが、負け数が勝ち数を上回ったことはない。このあたりが通算181勝179敗という結果を象徴している。17年はチームが96敗する中、石川は4勝14敗でリーグ最多敗戦だった。それでも21年間、故障で戦線を長期離脱したことはない。今年、「大卒21年連続先発勝利」と自身の記録を更新した息の長い投手である。
昨年終了時点で、剛腕エースの田中将大(楽天ほか)は日米通算181勝、松坂大輔(西武ほか)が日米通算170勝、涌井秀章(楽天ほか)が通算150勝。これらと比較しても、決して強いとはいえないチームを、長きにわたり支えてきた「小さなエース」の「181勝179敗」という成績には数字以上の価値があるだろう。(新條雅紀)