JRAの年度代表馬まで上り詰めたモーリス(写真/gettyimages)
JRAの年度代表馬まで上り詰めたモーリス(写真/gettyimages)
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 競馬の面白くも難しい点のひとつに、高額で取引された良血馬が必ず活躍するわけではなく、安価な非エリート馬が大成するケースが珍しくないことがある。今回は安く競り落とされたところから這い上がって名を成した馬たちを取り上げてみようと思う。

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 なお本稿ではセールを通さず庭先取引で売買されたため明確な売買価格が不明な馬(有名な格安馬ではキタサンブラックなど)や、競りで主取り(取引が成立せず売り主が引き取ること)となった馬は対象外とし、物価変動なども踏まえてなるべく最近の馬に絞ることとした。

 セール出身の格安G1馬というお題で、競馬に詳しいファンがまず思い浮かべる馬はテイエムプリキュアだろう。同馬は当歳時の2003年に日高軽種馬農業協同組合主催のオータムセールに上場されると、テイエムの冠名で知られる竹園正繼氏にたった262万円で落札された。

 テイエムプリキュアの血統を見ると、父パラダイスクリークはカネツフルーヴ(帝王賞)などを出していたが種牡馬としては地味で、ステートリードン産駒の母は芝の条件戦を2勝したのみ。近親もおじにダートで活躍したエムアイブランがいる程度と、特にセールスポイントがあるわけではなかった。

 しかしテイエムプリキュアはデビュー戦でドリームパスポート(後にダービー3着など)らを下して勝利すると、暮れのG1阪神ジュベナイルフィリーズまで3連勝で最優秀2歳牝馬に選出される快進撃。その後は長い低迷期間を過ごしたが、6歳となった09年1月にG2日経新春杯を11番人気で逃げ切った。

 そしてその年の11月、競馬史に残る大番狂わせとなったG1エリザベス女王杯で、逃げたクィーンスプマンテに続く2番手で先行して後続を大きく引き離し、最後に猛追してきた大本命ブエナビスタを抑え切って2着に粘り込み。11番人気・12番人気・1番人気の決着で、3連単154万5760円の片棒を担いだ。最終的に通算37戦4勝、獲得賞金は2億474万円に達している。

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年度代表馬まで上り詰めた馬は?