3人が暮らす日本家屋は広々とした5LDK。千晶さん、龍一さんの両親が来てもゆったり泊まれる
3人が暮らす日本家屋は広々とした5LDK。千晶さん、龍一さんの両親が来てもゆったり泊まれる

 話が整い、二人が内房エリアにやってきたのは2016年のこと。初めての土地だったため、最初は賃貸住宅で様子を見ることにした。

「借りたのは木造平屋の50平米の家で、賃貸料は月5万円。駐車場と庭も付いていたので、かなり格安でした。暮らしてみると、スーパーに並ぶ魚も野菜も新鮮で安いので、おのずと自炊が増え、外食費を抑えられました。生活費全般が安く済むし、暮らしやすい街だったので、これなら定住しても大丈夫と確信できました」。

 そして2年後、長男のふうた君が誕生したことをきっかけに、定住を視野に入れ、大きな家に引っ越そうと夫婦の意見が一致。チラシなどを頼りに古民家を見て回り、今の家と出合った。売りに出る直前まで前の住人が住んでいたため傷んでいるところもなく、2階建ての5LDKと広さも申し分ない。母屋のほかに離れもあり、庭と駐車場が付いていた。ただし、快適な住まいにするには少々手を入れる必要があり、リフォーム代はかかった。

「私も夫も背が高いので、キッチンを10センチ高くしたり、床暖房を入れたりしました。でも、うん、住みやすい家になったので満足です」とほほ笑む千晶さん。

 立地は内房エリアでも少し奥まったところ。幼い子どもを連れた若い夫婦に対し、近隣の反応が心配だったが、思いのほか好意的だった。わざわざ梅干しを携えて訪ねてくれたり、庭の手入れ方法を指南してくれたりと、周囲の人たちがどんどん距離を縮めてくれた。

「伐採した庭の木の処理に困っていたら、近所の人が『俺の山に捨てればいいよ』って、軽トラックで運んでくれたときはびっくりしました。山を持っていらっしゃるんだ、スケールが違うなあって(笑)」

松ぼっくりに石ころ。ふうた君が拾ってきた宝物の数々が並ぶ。自宅周辺はまさにワンダーランドだ
松ぼっくりに石ころ。ふうた君が拾ってきた宝物の数々が並ぶ。自宅周辺はまさにワンダーランドだ

 子育て環境という意味でも、この町はすでに離れがたい場所になっていた。
「ふうたが幼いときから、市内にある保育園に通わせているんですが、シュタイナーを主体にした里山保育をやっていて、とてもおもしろい保育園なんです。自由度が高くて、たとえば、お絵描きの時間は題材も色も自由に選んでいいし、席も決まっていません。子どもたちがケンカしていても、大人は介入せず、子どもたちに解決させるのが園の方針。親同士も理解しているので、もめることもありません。とてもいい園なので、ここを辞めさせたくなかった。その縁もあり、ここで暮らしたいと思えたんです」

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夫婦は新しい生きがいを見つけた