土を耕し、種をまき、収穫を迎える。畑仕事は、「自然相手だから難しいぶん、楽しい」(龍一さん)
土を耕し、種をまき、収穫を迎える。畑仕事は、「自然相手だから難しいぶん、楽しい」(龍一さん)

 龍一さんが農業に興味を持ったのは学生時代。2カ月ほど滞在したインドでの体験が大きかった。

「インドの集落の暮らしは貧しいけれど、とても豊かでした。たとえば牛乳屋さんは牛を連れて家の軒先まできて、乳を絞って売るんです。テレビも携帯もないけど、本当、豊かだなあと思いました。じゃあ日本の良さってなんだろう。自分に問い直したとき、たどり着いたのが"里山文化"でした。人と自然が調和する里山での暮らしこそが、もともと日本人が守ってきたもの。よし、里山や環境をテーマに活動しよう。そう思いが定まり、茨城県の環境保全活動をしているNPO法人で1年間インターンシップ(就業体験)に参加して、農業経験を重ねました」

 大学卒業後は地元で運営する新規就農者を育成する研修事業で1年間、市内の農家の元で農業研修に従事。その後、畑を借りることができ、無事、営農生活をスタートさせた。龍一さんもまた、農業に憧れる千晶さんの思いを感じ取り、二人はすぐに意気投合。ほどなく、新婚生活をスタートさせた。

 当初、龍一さんは地元での営農に志を持っていたが、環境は野菜づくりに最適とは言い難く、別の場所でもっとオーガニック農業を勉強したいという思いが高まっていった。そんなとき、内房エリアにある「株式会社耕す」の農場長から「一緒に働かないか」と声がかかる。その環境やコンセプトには十分納得ができ、就職を決意。同時に内房エリアへの移住も決めた。

「農業をやるだけなら、ほかにも選択肢はあったんですが、いきなり全く知り合いのいない別の県に行くのは、あまり現実的ではない。友達も親もいる県内のほうが安心だろうと思ったんです」と龍一さん。一方、千晶さんはモデルの仕事を続けていたので、東京に通える場所がよかった。内房エリアからは高速バスが15分に1本出ており、東京や横浜までは1時間前後。内房線も使えるなど交通の便はよく、移住に異存はなかった。

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