芸歴35周年を迎えた吉本新喜劇の辻本茂雄さん(57)。記念公演「辻本新喜劇inなんばグランド花月7DAYS」(7月25日から31日)などメモリアルイヤーをあらゆる形でかみしめています。2019年まで20年間座長として新喜劇をけん引し、座長勇退後はニュートラルな立場から新喜劇を見てきましたが、その中で込み上げてきた思い。愛ゆえの苦言、そして若手に望むこととは。
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2019年で20年やらせてもらった座長生活に区切りがついたんですけど、そこからも座長時代と同じか、それ以上にバタバタはしています。
なんばグランド花月、よしもと祇園花月での通常興行、そして、自分の公演。今もいろいろさせていただき、ありがたいばかりです。
ただ、この(勇退後の)3年の間には、新型コロナウイルスの蔓延という不測の事態があった。これは非常に大きなことでした。
一時期はテレビ番組もいろいろ出していただきましたけど、僕が主役になれる場はどこやろうと考えた時に出てきた答えは「舞台」だったんですよね。
どれだけ出してもらってもテレビで自分がメインになることはない。やしきたかじんさんや上沼恵美子さんのもとで出ているわけですから。
そして、実際にたかじんさんや上沼さんからも、僕のホームグラウンドは新喜劇であるとたびたび言ってもらってきました。
だからこそ“茂造じいさん”というキャラクターを積み重ねてきたつもりですし、最高のエンターテインメントはライブである。そう思って自信を持ってやってきました。
でも、コロナ禍でそこがなくなる。これはホンマに衝撃でした。ホンマに堪えました。
自分が誇りを持っていたことができなくなる。もちろん、不安もすごくあったんですけど、逆に再認識できたこともありました。それがお客さんへの思いだったんです。
いろいろなところで「コロナ禍で舞台がなくなって、お客さんへの感謝が増した」という話を聞きました。ただ、それを聞いて自分の中である種の違和感もあったんです。「コロナ禍があろうがなかろうが、常にお客さんには最高のものを見てもらわないとダメなんじゃないか」と。