チャンス大城さん(撮影/写真映像部・東川哲也)
チャンス大城さん(撮影/写真映像部・東川哲也)

「おまえら、別々に車に乗れ。こいつ(サイトウ)は後でゆっくりしばいたるわ」

 サイトウは、突撃に加われない傷病兵のようなものでした。

 時刻はちょうど夜の10時頃です。僕は車に乗せられたとき、「これから本当に殺されるんだ、このまま死んでしまうんだ」と思いました。短い人生だったなと思ったら、もっと勉強して私立に行けばよかったなとか、危ないバイトなんかするんじゃなかったなとか、後悔が次々と頭に浮かんでくるのです。

 車で連れていかれたのは、六甲山にある心霊スポットとして名高い、すでに閉鎖された宿泊施設でした。車から降ろされると、宿泊施設の前で僕ひとりだけスコップを渡されました。

 親玉が言いました。

「穴掘れー」

 僕はひとりで穴を掘り続けました。メチャメチャ掘ったと思っても、ぜんぜん許してもらえません。

「まだやー、もっと深くやー」

 1時間以上、最後は穴の中に降りて掘り続けました。僕はもう汗だくです。ワダは僕が穴を掘っている間じゅう、ずっと泣き続けていました。

 ようやくOKが出たと思ったら、

「入れー」

 と言われました。

 僕は自分の掘った穴に首まで埋められて、首の周囲を工事用の凝固剤みたいなもので固められてしまいました。まったく身動きが取れません。

 こうしておいて顔面を蹴りまくるのだろうと思っていたら、親玉たちは、

「じゃあなー」

 と言って、ワダを連れて立ち去ろうとするのです。思わずワダが言いました。

「オオシロ、俺、どうなんのやろ」

 ワダを乗せて、2台のヤンキー車がさっき上ってきた道を下りていく音が聞こえました。

「えーっ、埋められんの、俺だけなん?」

 車が去ってしまうと、あたりは完璧な暗闇でした。まったく何も見えません。僕は恐ろしくて恐ろしくて、半泣き状態でした。

 やがて、山道を上がってくる車の音が聞こえました。車は僕が埋まっている施設のそばまで来て、止まりました。

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車から降りてきたのは…