同じくFAオリックスに移籍した小谷野は移籍3年目の2017年に130安打を放って復活を見せたが、所属した4年間でレギュラーとして活躍したのはこの年だけだった。今年楽天に移籍した西川も出塁率(.355)、盗塁などはさすがという数字だが、打率は2割台前半に低迷。全盛期と比べるとやはり寂しい数字となっている。陽と大野については移籍後に大きく成績が下がり、高いコストをかけて獲得した巨人中日にとっては大きな誤算だったと言えるだろう。

 一方のトレードに関しては糸井嘉男、エスコバー、鍵谷陽平、高梨裕稔など移籍先でも活躍した例はあるが、逆に獲得した選手でも杉浦稔大、大田泰示、公文克彦、宇佐見真吾などが主力になっており、“収支”で考えれば決して悪くない結果となっている。この点でも編成は十分に機能していると言えそうだ。

 しかしそれではなぜここ数年チームは低迷しているのだろうか。その原因は、退団した選手の穴を埋める新戦力の台頭の遅れにあるのではないだろうか。かつてドラフト上位指名で入団し、主力になった選手を見てみるとダルビッシュ有、大谷翔平、有原航平は2年目で早くも二桁勝利をマークしており、中田と西川も4年目には主力に定着している。陽や吉川光夫のように時間がかかった選手もいるが、高校卒の選手でも早くから一軍で活躍するというのがかつての日本ハムのお家芸だったのだ。

 現在のチームを見てみると今年になってようやく清宮幸太郎と吉田輝星の2人が成長を見せているが、ともにまだ万全の主力とは言い難い状況である。主力を放出することで新陳代謝を促しても、新しい血が機能しなければチームは低迷するということがよく分かる。

 ただ、今年に入ってようやくチームが活性化されつつあることは間違いない。今シーズンの優勝は既に絶望的とも言える状況だが、来シーズンに向けてどのように戦力を整備していくのか。今後の日本ハムの動きに注目だ。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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