ただ、毅然とした態度を取れる女性ばかりではない。海上自衛隊の場合、出航すると1カ月は海の上で、24時間ずっと同じメンバーと過ごす。セクハラを騒ぎ立てたりすれば、気まずい雰囲気のまま同じ空間に居なければならない。
「騒動になると、勤務しにくくなりますし、仕事も教えてもらえなくなります。だから、声をあげられない女性の気持ちはよくわかります」
また、現役の自衛官は機密事項を扱うことがあるため、SNSでの発信は「ご法度」だという。
「私のいた部隊では、SNSでの発信は原則監視されるか、禁止だと教育されました。閉鎖空間なうえ、内部から声をあげにくいという特殊な環境なんです」
だからこそ、「元」自衛官が声をあげるべきだと訴える。
「五ノ井さんに起きたことは、性暴力という犯罪です。一部の隊員による悪質な行動を助長させていた実態があるなら、事実を明らかにして、世間に知ってもらうべきです。それに対して、防衛省や自衛隊がどう対応するのか注視しています。このままでは、まともな隊員は自衛隊に残れなくなるでしょう」
こうした女性自衛官たちの声は五ノ井さんの元にも多く届いているようだ。五ノ井さんは改めてこう話す。
「勇気を出してお話してくれて本当にありがとうございます、という気持ちです。私だけではなくかなりの女性がセクハラ被害にあっていることからも、より一層、対策を徹底的にしてもらいたいです。コミュニケーションの一部とか、スキンシップの一部で済まされる問題ではありません。これをしたら相手を傷つけないだろうかと、しっかり考えて行動するべきだと思います。そして、(自衛隊の中で)もっとパワハラ・セクハラについての教育を徹底すべきです。私がいた隊では、教育はありましたが、男性隊員たちは真剣に聞いていなかったり、人ごとでした。厳しく教育する必要があると思います」
(AERA dot.編集部 岩下明日香)
※AERA dot.では女性自衛官の方々の声を引き続き取材します。現役でも退職後でも、自衛隊内でパワハラ、セクハラ被害にあった当事者の方はこちらに体験をお寄せください。
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