元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(22)が、昨年の訓練中に複数の男性隊員から性被害を受けたことを告白したことが「#MeToo」に発展しそうだ。実名・顔出しで告発した五ノ井さんに対して、編集部には「負けるな」「一人じゃない」と女性自衛官たちから多くのエールが届いた。AERA dot.は現役も含めた女性自衛官4人に取材。【前編】では、五ノ井さんと同じ陸上自衛隊の元・現役の自衛官に自身が受けたセクハラ被害を明かしてもらった。【後編】では海上自衛隊に所属していた2人の元女性自衛官に実態を聞いた。
【写真】実名・顔出しで陸上自衛隊で受けた性被害を告発した五ノ井里奈さん
* * *
陸で起きていたセクハラは、海の上でも起きていた。
元海上自衛官の女性・Cさんは、2010年代に20代前半で入隊し、4年間勤務していた。
Cさんによると、所属していた部隊の雰囲気はまるでヤンチャな高校のように感じたという。たとえば水泳大会で、Cさんが水着を着て泳いでいると、別の部署の男性隊員が「あいつ(Cさんのこと)、めっちゃ胸でかかったよな」とわざわざCさんの部隊の隊員に大きな声で言う。それを聞いた男性たちはニヤニヤと笑う。常にそういう雰囲気だったという。
「バリバリの体育会系の人たちが、中高生の部活のノリのまま、社会に出ているような感じです。ノリで女性が嫌がることを平気で言う。仲間内のネタとして言っているのでしょうが、言われた方は不快ですし、真面目に訓練したい女性隊員からしたら、その度にイヤな気分になります」
そうした雰囲気の中で、Cさんが退職を決意した原因は、40代後半の上官からのセクハラだった。
たとえば、Cさんが船の外に出ると、ベンチに座っていた上官から手を引っ張られて膝の上に座らさせられる。「一緒にご飯を食べよう」と誘われ、他の人とも同僚として外食に行くことがあるので、大丈夫かと思って行くと、車の中で手をつながれる。上官と二人きりにならないように避けても、肩を触られるなどのボディータッチをされる。事あるごとに、こうしたセクハラが繰り返された。
「細かいセクハラの積み重ねによって、精神的に参ってしまいました」(Cさん)