最後はチームの先輩をいじる仰天発言で注目された楽天・辰己涼介だ。
昨年4月7日の西武戦、開幕から“不動の1番打者”に定着した辰己は、1対0の3回に効果的な3号ソロ、1点差に迫られた7回にも2点タイムリー三塁打を放ち、4打数2安打3打点。7回2失点で開幕2連勝のエース・則本昂大とともに勝利の立役者になった。
ところが試合後、お立ち台に上がった辰己は、則本の投球について質問されると、「前回登板もそうですけど、なんか悪いことしたんかいなというくらい、気合が入っていたんで、僕ら野手がしっかり点取ってあげて、勝たせてあげたいなと思いました」と真顔で回答。スタンドをどよめかせた。
実は、則本は同年3月末発売の一部週刊誌で、自身の不倫と離婚問題を報道されたばかり。同じ関西出身でプライベートでも親しい先輩に対し、「悪いこと」という遠慮会釈ない物言いは、報道以来、チームに漂っていた微妙な空気を笑いに変えて払拭したいという思いもあったようだ。
初めは驚いたファンも事情を察してか、どよめきも一拍置いて笑いと拍手に変わった。
コンプライアンスの影響もあって、控えめな発言も目立つ昨今にあって、辰己のように「次はどんな発言が飛び出すか?」とファンをワクワクさせてくれる選手は、貴重な存在と言えるだろう。(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。