だが、ヒーローインタビューで、次なる目標の2位確定を促す質問に対し、「最後の最後まで僕はもつれると思ってますんで」と現実的に答えたところ、スタンドから「エーッ!」という拒絶反応が返ってきた。
すぐさま空気を呼んだ稲葉は「最後まで全力で戦うという意味です」と言い直し、「すいません」と謝罪した。
阪神時代の新庄剛志は「明日も勝つ!」と宣言しながら、チームが翌日から12連敗なんてこともあったが、ファンはたとえ実行できなくても、ポジティブな発言を望んでいるのである。
ちなみに稲葉は、翌日のオリックス戦でも0対2の4回に同点タイムリー二塁打を放ち、自らのバットで2位を確定させている。
他球団に移籍した選手が古巣の本拠地でヒーローになったときにも、かつてのファンとの間で感情の行き違いが起きやすい。
19年9月20日のDeNA戦、巨人移籍3年目の山口は、7回途中4失点ながら、大量9点の援護を得て、移籍後初めて古巣・横浜スタジアムで白星を挙げた。
歓声にまじって、ブーイングも飛ぶなか、お立ち台に上がった山口は「ハマスタで勝てて、すごく気持ちいいです。(ブーイングに)負けじとレフトスタンド(巨人ファン)からすごい声援を貰えた。(ブーイングも)僕の気持ちを奮い立たせてくれました」とうれしさをあらわにした。
移籍1年目からDeNA戦で投げるたびに「裏切り者!」と“口撃”されていた山口にしてみれば、言わずにいられなかったのかもしれないが、ネット上では「喧嘩売られた、ムカつく」「こんなに素晴らしい皮肉ある?」など、ベイファンと思われる非難が相次いだ。
山口は昨年6月23日のDeNA戦の勝利後にも「もっとヤジが多いかなと思ったんですけど、すごく温かい応援ありがとうございます」と思わせぶりな発言をして、「煽りとしか思えない」と古巣のファンをカリカリさせている。
将来トレードなどで古巣に復帰することもあるので、刺激するのは考えものなのだが……。