八ヶ岳の天狗岳にて。2007年2度目のマネージャー時代(写真提供:著者)
八ヶ岳の天狗岳にて。2007年2度目のマネージャー時代(写真提供:著者)

 橋本が亡くなってしばらくしてのこと。港区にある寿司屋で居合わせた客と口論になった。野口が橋本の話をしていたのを聞いていたその客が「いや、橋本政権の功罪はちゃんと分けて考えなきゃ」と言ってきた。その客と野口のやりとりを聞いていると、議論としては客観的に見ればその客に軍配があがるものだった。野口の主張は、感情的で冷静さを欠いていた。議論としては完全に負けていた。でも、その完全に破綻した野口の、「論」とはとても言えない感情の発露を見ていて、なぜか私は悪い気はしなかった。

 橋本は港区の青山霊園に眠っているが、山をこよなく愛したことからエベレストを望むネパールのタンボチェ村にも慰霊碑がある。野口はヒマラヤ登山の際には、出発前に青山霊園を訪れ、ヒマラヤ入り後はタンボチェ村の慰霊碑を必ず訪れている。

前編から続く>

○小林元喜 こばやし もとき
ライター。1978年、山梨県生まれ。法政大学経済学部卒業。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。法政大学在学中より作家の村上龍のアシスタントとしてリサーチ、ライティングを開始。『共生虫ドットコム』(講談社)、『13歳のハローワーク』(幻冬舎)等の制作に携わる。卒業後は東京都知事(当時)の石原慎太郎公式サイトの制作・運営、登山家の野口健のマネージャー等を務める。現在に至るまで野口健のマネージャーを計10年務めるが、その間、野口健事務所への入社と退職を3度繰り返す中で、様々な職を転々とする。現在は都内にあるベンチャー企業に勤務。

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