AERA 2023年3月6日号より
AERA 2023年3月6日号より

「もちろん、安全のためには当然の措置です。しかし、それらの家屋に支援者が入らなければ、被災者がひとりで無理に片付けをしてけがをしてしまうかもしれない。あるいは、補修すれば住める家だったとしても片付けをあきらめてしまうケースもあるでしょう。そのままにするわけにはいきません」(中島さん)

 中島さんは専門知識を持った技術系ボランティアを率い、一般ボランティアでは解決できないこうしたニーズに対応する。危険性が高い場合、重機で屋根を支えたり、折れた柱を補修したりしてから内部に立ち入る。

 地震の揺れや強風で破損した瓦屋根の応急措置も、中島さんの得意分野だ。中島さんは本地震以降、各地の地震・台風被災地で家屋の屋根にブルーシートを張ってきた。被災した屋根を放置すると、雨漏りし、室内が水浸しになる。修理を依頼しても、多数の家が一斉に被害を受ける被災地では業者が不足し、なかなか順番が回ってこない。応急処置が必須だが、専門知識がない被災者が強風で飛ばされないようシートを張るのは難しい。高齢世帯など自力での対策が不可能な家も多い。そうした被災者を狙って法外な値段で代行する悪徳業者も跋扈(ばっこ)する。

■自衛隊にレクチャー

 中島さん自身、はじめは「やる人がいないからやむを得ず」屋根に上った。当初は確立された方法もなく、試行錯誤の手探り状態。大阪北部地震(18年)の被災地では、中島さんが張ったブルーシートが台風によって土嚢(どのう)ごと飛ばされ、別の家の窓ガラスを突き破るという失敗も経験した。それ以来、瓦職人らとも議論を重ね、ブルーシート張りを研究してきた。19年の台風被災地では、中島さんらが自衛隊に対して屋根の上での動き方やブルーシートの張り方をレクチャーする場面もあった。

 21年2月に震度6強、22年3月に震度6弱の揺れに襲われた福島県新地町でも、2度の地震で寄せられた技術系案件の対応を中島さんに依頼した。新地町社会福祉協議会の目黒莊一事務局長は言う。

「発災直後から要支援者宅を回るなかで、私たちでは対応できない屋根の上での作業が必要になることが明らかで、力添えをお願いしました。中島さんがいるからこそ、中島さんの元に技術・知識を持ったボランティアさんも集まってきます。本当にご尽力いただきました」

 22年6月には、新地町とレスキューアシストとの間で災害支援に関する協力協定を締結した。新地町で災害が発生したら、ボランティアの調整や技術・資機材・人材の提供をレスキューアシストが担うもので、レスキューアシスト側にとっても情報共有がしやすく、スムーズな支援活動につなげられるという。

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