※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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口腔がんの中で最も発症頻度が高い舌がん。ステージIの早期であれば5年生存率は90%以上で、手術後も舌の機能を温存できる。また、大きさなどの条件によっては放射線治療が選択できる場合もある。

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「舌の側面に口内炎ができたと思っていたけど、2週間以上治らない」「舌に生じたできものが大きくなっていく」……こうした場合に疑われる病気の一つが、舌がんだ。口の中にできる口腔がんの一つで、口腔がん全体の半数以上を占める。

 特に舌の側面(舌縁)にできやすく、上側(舌背)にできることはまれだ。舌の粘膜が深くえぐれたり、盛り上がったりするほか、白色に変化することもある。進行すると、話す、かむ、のみ込む、口を開くといった口腔の機能に障害が出る。

 一般的な口内炎(アフタ性口内炎)と違って、ふくらみがあれば注意が必要だ。九州大学病院顎顔面口腔外科教授の中村誠司歯科医師はこう話す。

「口内炎がなかなか治らないと訴えて受診した患者さんを診るときは、まず指で患部に触れます。ポイントはかたいしこりに触れるかどうか。しこりがあれば、がんを疑い、次の検査に進みます」

 がんかどうかを確定するためには、組織を採取して顕微鏡で調べる生検が必要だ。しかし、病変の一部を切除する際にがん細胞が血中に流れる危険がある。

「最近は、表面をブラシなどでこすりとるだけで検査できる細胞診の精度が上がっています。臨床的にほぼ確実であれば、患者さんの同意を得たうえで、生検をせずに治療に進む場合も増えています」(中村歯科医師)

 がんと診断されたら、CT検査やMRI検査、超音波検査で、進行の程度を調べる。進行度は、がんの最大径や深さ、リンパ節などへの転移の有無によって決まる。早期のI期であれば、5年生存率は、90%以上だ。

■半分以上の切除では舌を再建する

 治療の基本は、手術でがんを切除することだ。切除範囲は、術後の舌の機能や再建するかどうかといったことを左右する重要なポイントとなる。

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腫瘍(原発巣)から「安全域」を含めた部分を切除