むしろ、最初から「実は真面目」というレッテルを貼られたことで、チャラ男キャラにとどまらない奥行きがあることが多くの人に伝わり、彼らの個性が出しやすくなったのではないか。
特に、兼近大樹は、自由奔放に危なっかしい発言をすることもあるが、ピュアな心で物事を捉えてときどき本質を射抜く発言をすることがあり、そこに独特の魅力があった。
「ワイプ芸の意味がわからない」「テレビの収録時間は長すぎる」などと、仕事に対する不平不満を堂々と述べたりもした。普通の芸人が言うと角が立つようなことでも、そのチャラさとかわいげのおかげできつく聞こえない。
芸人で言うとカズレーザー、文化人で言うとひろゆきのような、いい意味での空気の読めなさがあり、その資質がコメンテーターにも向いていた。
不本意な形でのコンビ解散を経験しているEXITの2人は、いずれも真面目で計算高く、売れるためのステップを着実に踏んでいけるタイプの芸人だった。彼らの狙い通りに仕事はどんどん増えていった。
彼らの歩んだ道のりは、これまでの芸人の型に当てはまらないものだった。彼らは目の前のファンを大事にしていて、徹底してファン目線に立ったサービス提供を心がけていた。
お笑いの世界では「芸人がアイドルのようにファンに対して媚びるような態度に出るべきではない」という不文律があるため、露骨なファンサービスのようなことを積極的にやる芸人はほとんどいなかった。
しかし、EXITは自分たちとお笑い界全体のファン層を広げるために、あえて従来の常識に縛られず、多彩な活動を展開していった。2019年にはパシフィコ横浜で観客5千人を集めて単独ライブを行った。宙づりで登場したり、舞台上から派手に炎が上がったり、お笑いライブの常識を超えた演出の数々で観客を魅了した。
お笑いライブの世界は、音楽ライブなどと比べるとまだまだ敷居が高いところがあり、お笑いに興味があっても二の足を踏む人が少なくない。そんな中で、EXITは外に向けた発信を続けて、お笑いを楽しむためのハードルを下げていった。皮肉にも、EXIT(出口)という名前の彼らがお笑い界への「入口」を作ってきたのだ。
独自の道を歩み続けてきたチャラ男コンビのEXIT。片方が既婚者となってもその勢いが衰えることはなさそうだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)