デビュー以来29戦29勝というハビブの無敗レコードは総合格闘技史上最長と言われており、パウンド・フォー・パウンドランキングで最強に推す声もある。そもそも打・倒・極、様々な局面を要求される総合格闘技で無敗を貫くのは困難であり、ハビブのように世界最高峰のUFCまで昇りつめながらこの記録を保ちえた選手は存在していない。

 ハビブ最強説に関してはUFCで怪我や不調で試合間隔のあく期間があったこと、防衛回数が他の王者に比べ少ないことなどが指摘を受けるが、キャリアを通じ苦戦した場面がほとんどなく、判定勝利の場合も全て3-0のストレートで退けているのは特筆される。2018年10月のコナー・マクレガー戦では3Rをマクレガーに獲られたが、これがUFC11試合目にして初めて失ったラウンドであった。

 山岳地帯ダゲスタンの高地トレーニングで培ったスタミナとレスリング&サンボを生かした技術で相手をテイクダウンし、グラウンドへ持ち込めば強力なパウンドと極め技で仕留める。またテイクダウンのプレッシャーを合わせた打撃も独自の当て勘と威力を誇った。

 さらなる防衛と無敗記録の更新、あるいはウェルター級に上げてのUFC2階級制覇も期待されたハビブだが、最愛の父にしてコーチであるアブドゥルマナプを2020年7月に新型コロナによる合併症で失い、その後の試合で引退を表明(2020年10月)。現在はロシアの団体「イーグルFC」のプロモーターとして後進の育成にあたっている。

 まさに伝説を残し一線を退いたハビブだが、突然変異的に誕生したのではなく、やはり強者を生み出す土壌がダゲスタンにあり、ハビブに続く選手が続々生み出されている。

 まず、ハビブの幼なじみで長年のトレーニングパートナーであったライト級のイスラム・マカチェフ。11戦11勝でUFCと契約し、2015年5月から参戦を開始。同年10月のアドリアーノ・マルチンス戦(UFC第2戦)こそ敗れたが、その後は破竹の10連勝。現在22戦21勝1敗とハビブに迫る戦績を残しており、次戦は10月22日、チャールズ・オリベイラとのライト級王座決定戦となる。盟友ハビブが保持したベルトを再びダゲスタンへ持ち帰ることができるか。

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今後は“ダゲスタン勢”が格闘技界を席巻か