ある特定の分野で、一般的な認知度とは違い、高い知名度を誇るもの・ことがある。格闘技ファンにおける「ダゲスタン共和国」はまさにこれで、一般より高い認知度で、その名を聞けば“強い”というイメージが浮かぶ。
【写真】ファイトマネーは2億円以上? 今年最も話題になった格闘技イベントといえば
ロシア連邦の南西部で最南端、カスピ海西岸に位置するダゲスタンは多数の民族で構成され、周辺の侵略に多くさらされた戦いの歴史を持ち、『格闘が全てを決する』という言葉があるなど格闘技が盛んな土地だ。
この地出身の格闘家として有名なのはリングスで活躍したヴォルク・ハン(1991年12月日本デビュー)で、ベースである軍隊格闘術コマンドサンボの関節技を次々繰り出しファンを魅了した。だが当時日本では、その出身地がサブミッションほど取り沙汰されることはなかった。
ダゲスタンの名を一躍高めたのはやはりロシア人初のUFC王者ハビブ・ヌルマゴメドフをおいて他ならない(2012年1月UFCデビュー、18年4月ライト級王座戴冠)。
1988年9月20日にダゲスタンで生を受けたハビブは、自身も格闘家(レスリング、サンボ、柔道)で優秀なコーチであった父アブドゥルマナプの指導を受け8歳からレスリングを開始。自宅をジムに改築してトレーニングに励んだというから那須川天心親子の姿も重なる。なお幼少のハビブが子熊とレスリングを行う映像も残されている。
そしてハビブは父の後を追うように柔道、コンバットサンボも学んでいき、コンバットサンボでは2009年に74kg級、翌10年には82kg級で世界選手権王者となる。総合格闘技ではウェルター級(77.1kg)を経てライト級(70.3kg)を主戦場としたハビブだが、コンバットサンボ82kg級やウェルター級でも活躍を可能にしたパワーが強さの理由の一つとしてあったのだろう。
ハビブは2008年に総合格闘技デビューし、16戦無敗で2012年1月からUFC参戦を開始。ダニエル・コーミエをはじめ多くのUFC王者を輩出したアメリカン・キックボクシング・アカデミー(AKA)に所属。ダゲスタン式レスリングと打撃、柔術を組み合わせた戦い方で無類の強さを発揮し、引退を表明した2020年10月のジャスティン・ゲイジー戦まで無敗を更新。結果的に29戦29勝のパーフェクトレコードを誇った。