昨年11月にオミクロン株が南アフリカで確認され、その後、日本でも急速に感染が拡大したオミクロン株ですが、冬の流行(第6波)の当初、感染力や重症度などオミクロン株に関する情報が不足していたことから、「オミクロン株に感染した患者は原則入院させる」という対策が取られていました。急速な感染拡大と共に、病院のベッド占有率が上昇し、病院が圧迫されることが懸念され始め、厚生労働省が出した「通知」により在宅でも治療が受けられるようになる2022年1月5日まで、原則入院とする措置は続きました。

 今年の1月初め、自宅療養を可能とする「通知」が出る前にコロナ陽性と診断した方が強制的に入院させられるという症例を経験しました。その方は、もともと高血圧で通院中の50代の男性で、新型コロナウイルスワクチンは未接種。発熱と倦怠感を主訴に受診され、迅速抗原検査にて陽性を確認し、感染症法に基づいて発生届を提出したところ、すぐに保健所から本人に連絡があり、その日の夕方には保健所の指示により入院となってしまいました。本人は自宅療養を希望し、私も入院の必要はその時点では必要ないと判断していたにもかかわらずです。

 入院当日、抗体カクテル療法(発症から時間の経っていない軽症例において、重症化を抑制することを目的とし、体内に中和抗体薬を注入する治療法)が実施されましたが、翌日には36度台に解熱。それ以降、発熱はなくたまに軽い咳を認める程度でした。

 彼が入院していた時点での「通知」 には、「症状軽快後24時間経過した後、24時間以上間隔をあけ、2回のPCR検査で陰性を確認できれば退院可能とする」という退院基準が定められていました。迅速抗原検査と同時に実施した彼のゲノム解析の結果は、「デルタ陰性」。そのため、彼はオミクロン株による感染の可能性が高いと判断され、症状もすっかり改善し、入院翌日以降は治療を一切行っていかなったにも関わらず、この退院基準をクリアするまで退院できない状況に陥り、結果として入院11日目になっても彼に退院許可が出ることはありませんでした。しかしながら、医療体制の圧迫への懸念から、厚生労働省が「通知」の一部改正を行い、急遽、彼も保健所の許可を得て退院することができたのでした。

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病院での隔離は心身だけなく社会的影響も