病院での隔離は、患者にとって身体的、心理的、精神的、そして社会的な影響を及ぼすことが指摘されています。この患者も、入院2日目には回復したのにも関わらず、仕事もできず、外出も許されず、何もすることがなく、精神的に参ってしまったと言います。

 結果的に重症化には至らなかった今回の症例ですが、入院する必要性はなく、自宅療養で経過を観察し、症状の悪化を認めた場合に入院を考慮する措置でよかったのではないかと私は考えています。

 当初、オミクロン株の患者に対しては「原則入院」とし、重症度を考慮しなかった結果、上述したような患者まで入院することになり、病院のベッドが逼迫し、在宅療養中のコロナ感染者の死亡にまでつながってしまった可能性があるのではないでしょうか。コロナの院内感染も大きな問題となりましたが、無症状あるいは軽症のコロナ感染者を入院させることによって、院内発症のコロナ感染を引き起こした要因となった可能性も考えられます。

 そろそろ、医療提供者サイドの視点からコロナ対策を考えるのではなく、患者さんに寄り添った医療が提供できるよう、治療にあたる現場の医療従事者が、コロナ患者に対して個別具体的な医療を提供できるようなコロナ対策を再考することが必要なのではないでしょうか。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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山本佳奈

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山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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