チチがいた公園は季節の花がきれいな場所だったし、せめて桜が咲くくらいまで生きてほしいと思いましたが、あっという間でした。あっという間すぎて、実感がわかなかったくらいです。野垂れ死にはさせたくない、その思いで連れてきたがはずですが、これでよかったのかなと、わからなくなったりもして。

 チチは、「うちの子」として荼毘(だび)に付しましたが、火葬場の係から、「骨の様子からは年齢がわからないのですが、何歳ですか?」と聞かれました。

「じつは私たちもわからないのです。10日前に保護したばかりで」と答えると、とても驚かれました。でも、「この子はそこまでしてもらって、きっと喜んでいますよ」と言われ、ほっとする思いがしました。

 チチのことは、公園で顔を合わせた方には直接伝えたのですが、会えていない(チチを可愛がってくれた)方にもちゃんと伝えたいと思い、チチがいつもいた場所に花束を持っていき、花を包んだ紙にインスタアカウントを記しました。

チチがいた場所に千鶴子さんが置いた花束
チチがいた場所に千鶴子さんが置いた花束

 すると何人かの方が気づいて、<おかげで最後を知ることができました……お部屋の中で穏やかな顔をしていますね><チチちゃんはちゃんと(状況を)受けいれていますよ>などとコメントやメッセージをくださいました。その言葉にも、救われました。

 でも、チチは誰かに飼われていただろうから、本当は人とずっと一緒に暮らしたかっただろうし、もっと早く保護すればよかったし、いろいろなことをしてあげたかったという、消化しきれない気持ちもありました。

 お別れしてから半年経ち、またこうして振り返ることで、そんな思いも整理でき、やっと少し落ち着いたような気がします。

 じつはチチを火葬したらどこかに納めようと思っていたのですが、いざお骨にすると離れがたくなってしまって。リビングの一角に写真と一緒に置いています。

 時間が経てば経つほど、募っていく思いもあります。チチを家に連れてくる時は大変だったけど、あの時、手を離さなくてよかった。今、心からそう思えるようになりました。

 10日間だけ暮らしたチチに、こう言いたいです。

「甘えてくれてありがとう。チチはこれからもずっと“うちの子”だよ」

一緒に過ごしたのは10日間でも永遠の思い出
一緒に過ごしたのは10日間でも永遠の思い出

(水野マルコ)

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「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年の水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目線で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKです。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらにご連絡ください。nekosanzenri@asahi.com

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