【太田和彦さんオススメの北海道の名店】

●札幌 味あじひやくせん百仙
 札幌駅北口の「味百仙」は、北海道定番がよくそろい刺身も上等、全国の日本酒の
品揃(しなぞろ)えも優秀だ。かつおダシとバターでじっくり煮た<じゃがいもバター煮>(前日予約)は人気の品。長卓を囲むようなL字の小上がりで4、5人で、あるいはカウンターで一人でと使い勝手がよい。

●札幌 ふらの
 東京と変わらなくなってしまった札幌だが、脇路地「新京極通り」はかつての札幌の飲み屋小路を味わえて貴重だ。主人は富良野出身で、やや窮屈なカウンターがかえって温もりを感じさせる。なんでもないお通し<ゆでアスパラ>はやっぱり美味しく北海道大地の味。生ウニと味噌すこしを和えた<うにみそ>は酒の友。名物<かすべ煮>、冬にぜひと奨められた<いかのわた鍋>は古き良き北海道をじゅうぶん感じさせる。

●旭川 独どくしやくさんしろう酌三四郎
 旭川繁華街の36街を少しはなれた創業昭和21年の名居酒屋。番屋風の太い梁(はり)の店内は豪快だ。お通しは創業以来変わらない<酢大豆>。すらりとした美人おかみは日本三大白割烹着美人おかみの一人。秋、おかみが腕によりをかけてつくる<ニシン漬け>は食べなきゃ損の絶品。半世紀以上使い続けているかまど周りがいい。

●釧路 万年青(おもと)
 長大な焼き網に炭火がガンガンに熾る。人気の、タレに浸(つ)けた豚肉の巨大ステーキ300グラムを地元の人はぺろりと食べる。炉端焼の最高峰メンメ(キンキ)はどの店もよい値段がするが、大きいので2、3人でとるとよい。その食べ終えた骨でつくる<骨湯>を忘れるな。屋台から始めて50年以上、朝7時までやっている典型的な地元の炉端焼。

●函館 粋花亭(すいかてい)
 東京などでみっちり料理修業を積んだ主人は故郷函館で、北海道素材を生かして新境地を開いた。北海道の逸品・かすべ(えいひれ)の<かすべ山椒焼>、噴火湾フグの<焼フグとホワイトアスパラの梅肉和え>など、彼の料理をめざして全国から客が来る。10品ほどが並ぶ渾身(こんしん)の<一口お通し>は満足間違いなし。酒揃えも充実の"北海道の星"。

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