ファンサービスの豪華継投が、結果的に優勝の行方にも影響を与えてしまったのが、92年の中日だ。

 10月9日、すでに最下位が決まっていた中日・高木守道監督は、本拠地・ナゴヤ球場でのシーズン最終戦、阪神戦で、最後まで応援してくれた地元ファンへの顔見せ目的で、主力投手を次々に投入する。

 先発はリリーフエースの鹿島忠。3回から山本昌、6回から同年44試合に登板した山田喜久夫とつないだあと、8回から今中、9回は守護神・与田剛で締め。とても消化試合とは思えぬ豪華リレーで阪神打線を散発4安打に抑え、1対0で勝利した。

 この結果、V争いの真っ最中だった阪神は、首位・ヤクルトと2ゲーム差に開いてしまい、残り2試合、ヤクルトとの直接対決2連戦に連勝してもプレーオフで再戦という厳しい状況に追い込まれた。

 高木監督は「継投は計算どおり。相手が阪神だったことは関係ない」と弁明したが、阪神は翌10日、ヤクルトに敗れ、無念のV逸……。前日の中日戦も含めて、「勝ちたい」の思いが空回りして、選手が硬くなっていた一面もあったが、筆者の知人の熱烈な虎党は、今でも「あの中日の継投が……」とボヤいている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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