一方、勉強についても、1年次には人の骨を正しく並べる「骨学」という授業がある。2年次になると解剖実習がスタートするが、その具体的な中身を一般の人が知ることはあまりない。
「6年間でどんな勉強をして医師になるかなんて、そういえばほとんど情報がないですよね。だからそのプロセスや、医大生にとって大事だという日常生活についても、丁寧に描いてみたいと思うようになりました」
そんな作品を支えているのが、現役の医大生たちだ。とくに解剖実習ともなると資料がほとんどないため、「彼らがモデルとなって説明したり、教えてくれたりしているんです」と三田さん。その圧倒的な協力があるからこその“リアル”が実現しているが、この作品を通して、三田さんはどんなことを伝えていきたいのだろう。
「医師になるのは何か特殊な能力を持った人だと思いがちですが、そんなことはないんですよね。解剖実習をやるまでメスなんて握ったことはないし、どう切ったらいいかもわからない。ときには失敗もしながら、地道な努力を重ねてスキルを身につけていく。ただ、一人で勉強だけしていてもだめで、周囲との関わりからコミュニケーション力も高めながら、徐々に医師になっていく。その過程はほかの職業とも変わらないわけで、そこを伝えていけたらいいですね」
■大学に入ってから興味を深めてもいい
とはいえ医学部受験には面接があり、志望動機を問われる。大学を選ぶ段階から、将来のイメージを持つことが求められている。
「僕が大学受験したときは、『商学部でも経済学部でも、どこかに合格できたらいいな』というくらいでした。もちろん10代で明確な人生の目標があれば素晴らしいけれど、ひとつの可能性として医学部に挑戦したっていいし、入学後に医学の面白さに気づくのもありだと思います」
あえて実家から離れた大学を選んでみるのも選択肢の一つとして勧めたい、と三田さんは続ける。