放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、何げなく使う「がんばって」について。
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日常生活の中で「がんばって!」という言葉をなにげに使っている人は沢山いるだろう。
一日に日本人が送っているLINEの中で「がんばって」という言葉を送ってる数ってすごいんじゃないかと思ったり。
僕自身はある時から「がんばって」と人に言うのが好きではない。「がんばってる人」に「がんばってね」というのが嫌だったから。なるべく使わないようにしているのだが、それでも時折、「がんばってね」と使ってしまったりする。
幡野広志(はたの・ひろし)さんという素敵な写真家がいます。1983年生まれで現在39歳。奥さんと6歳の息子さんがいる。
この方の書かれた「ラブレター」という本がとんでもなく素晴らしく、一人でも多くの方に読んでほしいと思っている。この本の最初のページに出てくる言葉は「僕は現代の医療では治せないがんになった」。多発性骨髄腫という血液のがんになったそうです。
34歳のときに発病し、このとき医師には「平均して3年の余命」と言われたと。そのあとに書いてある「がーん」。この一行で、幡野さんの人柄がわかる。人生との向き合い方がわかる。
発病したのは息子さんがまだ2歳にもなっていないとき。その状況で、治らないと言われる病気になるということは、近い将来に命の限りを迎えると言われたわけです。
この本には、幡野さんの「それから」と「日常」がつづられている。そして、そこに息子さんの写真が掲載されている。
僕の息子と1歳違い。ここに書かれている日常の発見にとてつもなく共感する。微笑ましく、愛おしく、そしてちょっと痛い。だからこそまた愛おしい。
年を重ねて、毎日、元気に生きていられることが当たり前じゃないと、わかっているつもりだが、この本を読むと、日常の当たり前を抱きしめたくなるのだ。