2016年、米国スタンフォード大学により、子宮内フローラの環境が悪いと体外受精の成功率が低下するという研究報告が発表された。ほかにも、子宮内フローラが着床障害や流産・早産などに関わっている可能性だけでなく、子宮筋腫(きんしゅ)や子宮内膜炎、子宮の悪性腫瘍(しゅよう)などの疾患と関係があるという報告もある。
同クリニックでは2018年から子宮内フローラ検査を導入。その経緯について、門上医師はこう話す。
「不妊の原因の多くは、受精卵(胚)の染色体異常と考えられています。しかし、着床前診断(PGT)で染色体を調べ、正常な胚を選択しても妊娠率は60%。残りの40%は妊娠できないという実情があり、着床障害がブラックボックスでした。そこへ、子宮内フローラ検査という方法があることがわかり、困っている患者さんにとって有意義な手段になるのではと考え、導入しました」
子宮内フローラ検査をおこなう機関はいくつかあるが、2017年に世界で初めて子宮内フローラ検査を独自開発したVarinos株式会社の検査を導入している。
検査は外来でおこなうことができる。腟内の菌が付着しないよう、十分に腟洗浄した後に細いチューブを子宮まで挿入し、子宮内腔液を採取する。痛みはほとんどなく、所要時間も5分程度と患者の負担は少ない。
採取した検体は検査会社で解析され、約3週間後に結果が出る。保険診療の適用外だが、2022年7月に先進医療の適用となった。費用は医療機関により異なるが、1回4万~6万円で実施しているところが多い。
同クリニックでは主に、受精卵が着床できない「着床障害」や、流産を繰り返す「反復流産」などの既往がある人に検査を提案しており、体外受精をおこなっている患者全体の1~2割を占める。体外受精を3回おこなっても妊娠につながらない人を原則としているが、年齢や患者の希望などにより、早めに検査をおこなうこともある。