近年では、患者自身で情報を入手し、自ら子宮内フローラ検査を希望する人もいるという。

「当院を受診する患者さんは、他院で治療をしたけれど妊娠できなかった人、長年不妊治療を続けてきた人などが多いこともあり、みなさん不妊治療についてかなり勉強されています。妊娠のために何かできることはないかと考え、積極的に検査を希望する人も多いです」(門上医師)

 Aさんは、子宮内フローラ検査の結果、ラクトバチルスは0%、細菌性腟症の原因菌であるストレプトコッカスという細菌が97.8%を占めていることが判明した。そのため、子宮内フローラを整えるための治療を1カ月間おこなったうえで再検査をしたところ、ラクトバチルスが95.9%にまで改善した。その後、2021年4月に胚移植をおこない、妊娠が成立。翌年に無事、出産を迎えた。

 同クリニックでは、2018年の検査導入から4年間で約780人に検査を実施。そのうち約50%の症例でラクトバチルスの割合が低く、治療が必要であった。1カ月の治療の結果、ラクトバチルスが増加する人がほとんどであり、治療後の妊娠率は62%というデータが得られている。

 検査の結果、ラクトバチルス80%未満の場合、同クリニックでは抗生物質と、「プロバイオティクス」という乳酸菌製剤を組み合わせた治療をおこなう。

「不妊治療に取り組む患者さんにとっては、少しでも早く子宮内の環境を整えて体外受精に臨むことが大切です。当院では、子宮内フローラに対する治療データだけでなく、治療により子宮内フローラが改善することで妊娠率が向上するというデータも蓄積されており、検査の意義は大きいと考えます」(同)

 生殖医療でおこなわれる検査には多くの種類があり、「そのなかで有意義な検査を選択し、患者さんに提案するのが医師の仕事」と門上医師は話す。

「不妊治療をおこなううえで子宮内環境の確認は欠かせないもので、そのひとつの手段が子宮内フローラ検査です。施設や医師の方針によりおこなう検査に違いはあるかもしれませんが、気になっている人はまず主治医に相談してみてください。その人に有用な検査かどうか一緒に考えることもできると思います。貴重な時間を無駄にしないためにも、必要な人には早めに検査を受けていただくことが大事だと考えます」(同)

(文・出村真理子)

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