人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、「テレビの熱かった時代」について。
* * *
何気なく、テレビのチャンネルをまわしていたら、懐かしいメロディが聞こえてきた。
「ブー フー ウー 三匹の子豚!」
私がNHKのアナウンサーになりたての頃、放送されていた人気子供番組の人形劇だ。
脚本は飯沢匡(ただす)。三匹の子豚役の声優は、NHK放送劇団の黒柳徹子、大山のぶ代、三輪勝恵。男兄弟役を女性の声でやる新しい試みであった。「おかあさんといっしょ」という番組の中での人気コーナーだった。
私は一九五九年にNHKに入局してすぐ名古屋に転勤しているから、六〇年に始まったこの人形劇を楽しみに見ていた。
今までにはなかった、お金のかかった質の高い番組で、飯沢さんの「子供には最高のものを提供したい」という望みが実現したものだった。制作していたのはNHKの婦人少年部。部長は江上フジさんだった。
おっかない存在だったが、あの頃、まだ女性の地位の確立していない時代にはっきり自己主張し、男に負けない地位で君臨していた。その意味で女性の管理職第一号である。
彼女の下で婦人番組を担当するのも全て女性。その後も様々な人気番組を生み、また誰もが口ずさめる名曲が作られた。「おもちゃのチャチャチャ」は野坂昭如さんの作詞だし、武満徹をはじめとする作曲家が参加し、指揮は山本直純など、一流の演奏家によって支えられていた。
ディレクターやプロデューサーもその道のエキスパート。「声くらべ腕くらべ子供音楽会」は子供ののど自慢番組で、私も担当していたことがある。子供の番組だからといって手を抜くことはなく、より良い番組を目指してみんなが燃えていた。
「おかあさんといっしょ」は初代の歌のお姉さん・眞理ヨシコさんや体操のお兄さんも選ばれて、いまの歌って踊っての基礎が作られた。この流れの中で民放の「ピンポンパン」もできた。