新築の”我が家”の縁側でくつろぐつば九郎(筆者撮影)
新築の”我が家”の縁側でくつろぐつば九郎(筆者撮影)

 その真骨頂といえるのが「フリップ芸」だ。言葉を話さないつば九郎は、代わりにスケッチブックを使った筆談でコミュニケーションを取る。神宮で試合がある日は、スタメン発表前にスタジアムDJのパトリック・ユウさんを相手にフリップで「今日のひとこと」を披露するのだが、これが実に面白い。野球などスポーツに限らず、その日その日の旬な話題を取り上げる「時事ネタ」も多く、時にタブーとも思えるような話題にも、ブラックユーモアを交えて切り込む。

 嚆矢となったのは、2011年に初めて神宮球場で開催されたCSファーストステージである。ちょうどその少し前に、チームきっての人気選手だった青木宣親に第1子となる女児が誕生し、何かお祝いができないかと考えたつば九郎とパトリックさんは一計を案じる。

「ただお祝いのアナウンスをするだけじゃ面白くないから、つば九郎と相談して、じゃあ試合前にフリップでやろうっていうことになったんです。生まれたばかりの青木選手のお嬢さんの名前を、僕たちで考えよう!っていう掛け合いで。そうしたらつば九郎がフリップに、まず「青木さやか(タレント)」、続いて「青木功(プロゴルファー)」、「紳士服のAOKI」って、もうワケわかんない(笑)。で、最後のオチが「青木バレンティーナ」。その頃、(ウラディミール)バレンティン選手にも女の子が生まれたからなんですけど、そういう頭の回転が本当に速い。つば九郎はやっぱり天才だなと思いますね」(パトリックさん)

 この時のやり取りが好評を博し、翌年から試合前のフリップ芸はレギュラー化する。今では「今日のひとこと」なしには神宮のスワローズ戦は始まらないといっても過言ではない。もう1つ神宮名物となっているのが、5回裏終了後に行われるつば九郎の「空中くるりんぱ」である。「くるりんぱ」は言わずと知れたダチョウ倶楽部の故・上島竜平の帽子芸だが、脱いだヘルメットを両手でクルクルと回してから天高く放り投げ、もう一度頭にかぶせるというのがつば九郎の「空中くるりんぱ」。ただし、これまでに成功したことはただの1度もない。

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スター選手からも“愛される”つば九郎