右が桜蔭学園の校舎。フェンスを隔てて左側がマンション敷地で、かなり隣接している(撮影/國府田英之)
右が桜蔭学園の校舎。フェンスを隔てて左側がマンション敷地で、かなり隣接している(撮影/國府田英之)

 さらに、マンションのベランダが校舎側に設置される。学園の要請を受け、管理組合は4階から校舎の最上階と同じ高さの11階まではベランダを設置せず、曇りガラスで開閉制限のある窓を付ける改善案を示しているという。だが、12階から上にはベランダが設置され、学校側からみれば、まさに真上から見下ろされるような状況になってしまう。

 齊藤理事長は、生活環境の大幅な悪化は避けられないと話す。

「日当たりはほとんどなくなってしまい、日陰での学校生活を強いられることになります。また、今でも窓を開けると、マンションの外廊下を歩く人や作業をする人の声が校舎内に聞こえてきますが、今度はチャイムの音や生徒たちが談笑する声、授業での合唱などが、毎日のように居住者の方々に聞こえるという事態も想定されます。もしクレームが入っても、ここは学校ですから音を消すことはできません」

 環境の悪化とともに学園側が懸念するのは、盗撮やのぞきなどの被害だ。

 実際、この数年の間に、マンションの共用通路に立ち入ったと思われる人物が教室にカメラを向けているのを生徒が発見したことがある。また、マンションの上階にある貯水槽のそばからカメラを向けている人物に近隣の人が気付いたなど、盗撮と思われる事例が報告されているという。

「それ以外にも、教員や生徒が気付かなかった被害があるかもしれません」(齊藤理事長)

 能楽堂の屋上に作られる予定の「公開空地」も心配の種だ。

 管理組合側は「地域の憩いの場になる」などと意義を説明しているが、女子校の校舎の目の前に、誰でも出入りできる広場ができることになる。

 各教室の窓にはブラインドが設置されているが、外から教室に目をやると、ブラインドのスラット(羽根)の角度によっては、教室の生徒たちが見える。

 最上階の空き教室に入ると、窓からは景色が見える。だが、ここにタワマンが建てば窓の外は大きな壁となり空は見えない。上階のベランダからは教室を見下ろされてしまう。

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