医師としての経験を重ねるにつれ、リハビリをめぐるさまざまな課題を知ることになった水間医師。同じ思いを持ち、ともに働き将来のリハビリ医療を担う医師の育成をしていきたいという思いが募ってきた。大学当局にその必要性を訴え続け、08年にリハビリテーション医学講座の開設が実現した。
■後遺症を抱える人たちの復職支援にも取り組む
退職後は複数のリハビリ病院を持つ医療法人の理事長として、訪問診療を含む地域リハビリテーションの普及に取り組んでいる。
「救命医療などの進歩で助かる命が増えれば、同時に、障害を持つ人も増える可能性がある。寿命が延びれば、誰にだって体に不具合が起こってきます。将来はリハビリのニーズがさらに高まることから、患者さんの身近な場所でリハビリを提供することが必須です」
さらに、「障害者が生きやすい社会の手助けになれば」と脳卒中後の後遺症などで障害を抱えた人の社会復帰もサポートしている。必要があれば、企業の担当者と話をするという。
「かつて担当した患者さんの中に復職後、閑職に追いやられ、退職を余儀なくされた人が少なからずいました。企業側に障害やリハビリについてもっと知ってもらえれば、こうしたケースは減らすことができると思っています」
水間医師が目指すのは、健常者と障害者が当たり前のように共生できる社会の実現だ。
「そのためにも健常者、障害者の区別なく、『同じ人間なのだから、できることを一緒にやっていこう』というマインドを持つ人を増やしていきたいですね。リハビリ医は患者さんの希望や人生を理解することが求められる仕事。医学として未知の分野が多い領域でもあります。リハビリ医を目指す若い皆さんに大いに期待しています」
水間正澄医師
1977 年昭和大学医学部卒。2008 年同大学医学部リハビリテーション医学講座主任教授、日本リハビリテーション医学会理事長、日本義肢装具学会副理事長などを歴任。現在、医療法人社団輝生会理事長兼在宅総合ケアセンター成城センター長。
(文/狩生聖子)
※週刊朝日ムック『医学部に入る2023』から