―緊張の試験本番はいかがでしたか。

 試験場に向かう道では毎回、「これで大丈夫だ!」とまじないをかけたキャンディを渡して、スイッチをオンにしていました。不安そうな時には、手を握るようにしていました。

 ある学校の面接試験で、息子に驚かされたことがありました。「両親と何をして遊ぶと楽しいですか?」という質問で「他には?」と繰り返され、それでも順調に答えていたんですが、突然ピタッと止まったんです。私は内心、「うわ、止まった!」と焦っていたのですが、次の瞬間、息子は「幸せなことばかりで、思い出せません」と答えたんです。面接の模擬練習では「なんだっけ?」とふざけることもあった息子が、なんだか大きく見えました。 

―結果は合格。小学校受験を振り返ってみて、今、どんなことを感じていますか。

 頑張ったことを褒め続けたのが自信となって、試験で運よく調子を出せたのだと思います。もしかしたら、私自身が受験準備を楽しんでいたのかもしれません。風呂敷で物を包める? 椿はいつ咲く? そういった文化的なことにも息子と一緒に改めて触れることができました。

 何より、努力する姿勢を教えられてよかったと思っています。息子は「できない」と泣くこともありました。そんな時には、いつも伝え続けていました。負けるなよ、逃げるなよ、できないと思うな、と。受験はほんの入り口、これからが大切ですから。

(AERA dot.編集部 市川綾子)

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