10月24日から始まった第35回東京国際映画祭。初日には、3年ぶりにレッドカーペットを有名俳優や映画監督たちが歩き、久しぶりに華やかな国際映画祭の雰囲気が戻ってきた。その一方で、レッドカーペットやメインステージ付近では、現場で“プチ混乱”が起こり、ファンや観客からは少なからず不満の声が上がっていた。
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映画祭会場は、東京ミッドタウン日比谷の入り口前のステップ広場にメインステージが組まれ、ミッドタウン脇にある日比谷仲通りにレッドカーペットが敷かれた。レッドカーペットの脇には柵が設置されていたが、午後の早い時間帯には、通りからでも赤じゅうたんを眺めることができ、観衆も豪華ゲストたちの姿を見て楽しめるような設営になっていた。
昨年から有楽町・銀座エリアに場所を移し、コロナ以降初となるレッドカーペット。より多くの人が映画祭を肌で感じられ、まだ認知度が低い東京国際映画祭を知ってもらうきっかけになるかもしれないという期待を持った。
メインステージの前には招待客やクラウドファンディングで閲覧権を確保した人が座れる席が設けられていた。その回りは柵で囲まれ、カメラエリアがぐるりと取り囲むようなつくりになっていたが、それでも構造上、やや離れた位置からはステージに立つ演者の姿を見ることができるようになっていた。当然、芸能人をひと目見ようと、広場後方には多くの人が集まっていた。
たまたま有楽町に遊びに来ていたという30代の女性2人組は「映画祭があること自体は知っていたのですが、ここでレッドカーペットがあるなんて知らなかった。(遠目ながらも)見られて楽しいです」と話していた。
午後3時55分、いよいよレッドカーペットが始まった。
しばらくはメインステージ付近でレッドカーペットを楽しむ人たちを取材していたが、先述した日比谷仲通り脇のエリアも、さぞ盛り上がっているだろうと移動した。てっきり柵越しに大勢の人が詰めかけていると思っていたのだが、昼頃とは状況が一変。レッドカーペット脇には2メートル近くある“黒幕”が柵の上から覆いかぶされていたのだ。その前にはスタッフたちが数メートルおきに配置されて、黒幕が風で飛ばされないように手で押さえていた。
黒幕の向こう、ほんの数メートル先にはスターたちが歩いているのだが、外側からは切り離され、まるで別世界のようになっていた。響くのはマイクの音声とマスコミのカメラのシャッター音のみ……。隣の商業施設の段差を利用し、背伸びして見ようとしていたスーツ姿の男性は「せっかくなのに、隠されて残念ですね」と苦笑いしていた。