■メインステージ後方にも「黒幕」が…
レッドカーペットの終盤、再びメインステージ付近に戻ると、左奥後方エリアの柵に、さっきまで無かった黒幕がかけられていた。いつの間にか、会場はどこもかしこも「黒幕」だらけになっていた。
もちろん、外からステージはほぼ閉じられてしまって見えなくなっており、数十人いた立ち見客もいなくなっていた。近くにいた誘導スタッフに「黒幕、さっきはなかったですよね?」と確認すると、「そうなんですよ。開始して1時間くらいして突然かけられてしまいました。どうやら、中にいるクラファンの観覧者から、『せっかく高いお金を払って見ているのに』と苦情があったらしいです」と話した。
東京国際映画祭はクラファン大手「Makuake(マクアケ)」を通じて、運営資金を募っていた。いくつか用意された寄付コースによって、映画祭グッズ、ホテル宿泊券、映画鑑賞券、レッドカーペットに用意された観覧エリアに入場できるという特典がついていた。
メインステージ前の入場エリアに入れるのは2万円コースで、ステージ前に用意された席から観覧できるというもの。確かに、2万円を払って(寄付して)見ているものが、後ろからタダで見られるのは腹立たしいのもわからないでもないが……。
公式ホームページの10月21日のお知らせ欄にも「会場でのご観覧は、招待者、クラウドファンディング(受付終了)で対象のコースをご支援いただいた方のみが、ご観覧いただけます。(※当日の会場付近からも、イベントの様子を見ることはできません。)予めご了承ください」と書かれてはいた。
だが、国際映画祭らしい「外に開かれた雰囲気」が、黒幕によって一気に損なわれてしまった感はある。
映画祭の担当者に、メインステージ後方左側に途中から黒幕で覆った理由について問うと「丸の内警察署から、人が滞留しているので隠すように指示された」と答え、苦情については「聞いていません」とのことだった。
国内外の多くの人が行き交う東京ミッドタウン日比谷付近という場所で行われ、国際映画祭らしい雰囲気が生み出せるはずのレッドカーペットが、クローズドの場になってしまったのは残念でならない。
東京国際映画祭をより広く知ってもらい、「国際」の名にふさわしいイベントにしていくためには、もう少し誰もが気軽に楽しめる雰囲気作りを考えても良かったのではないか。(大塚淳史)