九州の大学を卒業したCさん(21年卒)も、進路を変更した一人だ。Cさんは、第2志望だった電機メーカーに就職した。
「JAL、ANAが募集を再開したら応募するつもりでいましたが、仕事が忙しく、採用試験を受けられなかった。受験してもCAになれる保証はなく、いまの会社を辞めたら将来が不安なので、CAの夢は諦めました。この会社でキャリアを積むことを考えています」
実際、大学にすれば、学生が就職浪人して進路が不確定な状態が続くより、はやく内定を取ってほしい。後輩や、その大学を希望する高校生のためにも、就職率を高い水準で維持したいという思いもあるだろう。
■新卒募集の再開も 「狭き門」は続く
CAの夢を諦めていない既卒生にとって、今後の採用はどうなるのだろうか。川本さんはこう話す。
「今年、JALは3年ぶりに2023年度の新卒募集をしました。海外留学や大学院に進学してからCAを考える人、いったん就職してからCAを志望する人にも門戸を開き、募集をしなかった21年、22年の卒業生を第2新卒として同時に採用しました」
22年4月、JALは数回にわたってオンライン会議ツールで採用説明会を行い、のべ3000人以上の学生・卒業生などが参加した。JALグループの日本トランスオーシャン航空は、CAを新卒・第2新卒に続き、既卒でも募集している。
だが、JALのCA採用枠は約100人。コロナ禍以前の4分の1だ。ANAはまだ募集をしていない。志望者にとっては「狭き門」の状況が続く。
この春、関東の大学を卒業し、大学院に進んだDさんはこう話す。
「募集再開を待っていましたが、不安です。いま、社会学を専攻し、観光について研究しています。CAがだめなら、大学院修了者を採用してくれる旅行会社やホテルを考えています」
前出の川本さんは、CA志望者にこうエールを送る。
「コロナが落ち着くとCA募集は増えていくと思うので、いったん他社に就職していても、『やってみたい』という気持ちがあるなら、チャレンジをしてほしい」
航空会社からすれば、数年採用できなかったなかから優秀な人材を採りたい。それゆえ既卒者に門戸を広げている。CAになる夢をかなえたい人には再挑戦できる機会だ。一方、新卒にとっては厳しい競争が待っているだろうが、初志貫徹でがんばってほしい。(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)
※この記事はAERA dot.とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。