トラウトは2019年の開幕前、その時点で残っていた2年契約に10年の契約延長を上乗せして12年総額4億2650万ドル(595億5000万円)という超大型契約を勝ち取った。その契約には全球団への移籍拒否権も入っているがオプトアウト(契約破棄権)は含まれておらず、実質的には“生涯契約”といってもいい。だが、先述の通りビジネス的な“旨み”があれば、何が起こってもおかしくないのがメジャーリーグだ。

「トラウトはエンゼルスを愛しているが、(勝てない)チームの現状に関しては納得していない。温厚な男が負け試合で浮かない表情を見せる回数が増えた。好条件の長期契約で何不自由ないだろうが、『試合に勝ちたい』という気持ちは抑えようがない」(国内MLB中継関係者)

 エンゼルスはプレーオフ進出を8年連続で逃すなど低迷中。トラウト自身もプレーオフに出場したのは2014年のみで、大谷の言う「ヒリヒリする戦い」や栄光を味わったことはない。

 元チームメイトだった選手が、ワールドシリーズに出場したことの影響を指摘する声もある。今季、シーズン途中にエンゼルスからフィリーズへ移籍したブランドン・マーシュ外野手は本塁打を放ち、ノア・シンダーガード投手は先発マウンドに上がった。個人的には様々なタイトルを獲得しているトラウトだが、チームとしての究極の目標であるワールドシリーズはここまで程遠く、この2人に触発される可能性も否定できないだろう。

 またエンゼルスはチームが浮上する兆しも見えていないのが現状だ。2019年オフに大型契約を結んだアンソニー・レンドン三塁手が全く機能せず、“不良債権化”しそうなのが何よりも痛い。トラウト、大谷を含めた3人を同時に抱えた場合、金銭的には球団にとっては大きな負担となる。レンドンがトレードの駒としても使えず、来シーズンオフに大谷はFA、トラウトも全盛期を過ぎた感もあり、エンゼルスが“動く”決断をしなければいけない日は近いはずだ。

「レンドンが在籍する限り、大谷とトラウトのどちらかに放出の可能性がある。大谷が来オフFAとなる前に他球団の有望な若手との交換。また年齢が若い大谷との契約延長し、トラウトを放出するかもしれない」(スポーツエージェント会社関係者)

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エンゼルスは来季の前半戦が“勝負”