スケートアメリカのリズムダンスでスタート位置に立った村元哉中は、笑顔でカメラを見据えた。アイスダンサーとしての意志に満ちた眼差しで演技に臨もうとしている村元の右肩には、テーピングが施されている。
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今シーズンは、村元と高橋大輔にとって3季目となる。シーズンの本格的なスタートであるスケートアメリカを前にした9月末、二人は練習拠点のフロリダがハリケーンに見舞われる困難に直面した。仮の練習場所を転々とし、ホームリンクに戻れたのはスケートアメリカが間近に迫った時期だったという。しかし村元はフロリダのチームとファミリーへの感謝を、また高橋は仮の練習場所でシングル時代のコーチであるニコライ・モロゾフと再会したことについてそれぞれインスタグラムに綴り、前向きな姿勢をみせていた。また、村元がスケートアメリカで右肩にテーピングをしていたのは、リフトの練習の際に負傷したためだ。
思い返せば、昨季惜しくも北京五輪代表入りを逃した全日本選手権を戦い終えた直後にも、二人は囲み取材の場を設け、代表に選ばれた世界選手権に臨む意気込みを語っている。カップル結成直後からコロナ禍に見舞われる経験もしてきた二人は、常に笑顔を絶やさずしなやかに苦境を乗り越え、目を見張るような急成長を遂げてきた。
グランプリシリーズ初戦となるスケートアメリカでは、テンポの速いラテンに乗って目まぐるしく動くリズムダンスも、ミュージカルを観ているようなフリーダンス『オペラ座の怪人』も、観客を沸かせていた。フリーダンスの点数が出た際に観客から起きたブーイングは、二人の演技が持つ観る者を魅了する力の証明だといえる。
そして、スケートアメリカを戦い終えた直後に向かったというカザフスタンで、二人はデニス・テン メモリアルチャレンジに出場した。スケートアメリカから2週連続での試合出場だったが、二人は冷静に採点表を見直したようだ。レベルのとりこぼしなどを修正し、スケートアメリカよりもリズムダンスは9.89、フリーダンスでは8.73もスコアを伸ばし、合計188.30で国際スケート連盟公認の国際大会での初優勝を遂げた。