異常な頻度でミサイル発射を繰り返している北朝鮮。核開発や日本人拉致事件など、その横暴なふるまいは、世襲による独裁政治も含め、国際的に批判されている。にもかかわらず、北朝鮮が国家としての体裁を維持し続けるのはなぜか。『ざっくりわかる 8コマ地政学』から、マンガを交えて解説したい。
地政学的な視点でこの国を見ると、強力な勢力同士が直接国境を接するのを防ぐ役目、つまり「バッファゾーン」の役割を果たしていることがわかる。強力な勢力とは、アメリカ、中国、韓国、ロシア、そして日本だ。
朝鮮半島をバッファゾーンとする発想は、明治時代の日本にもあった。第3代内閣総理大臣の山県有朋が第1回帝国議会で示した防衛戦略がそれだ。山県は、日本の国土を守る「主導線」を維持するために朝鮮半島に「利益線」を引くという考え方で、軍事費の総額を主張。日本の大陸進出を正当化した。
時代は下って冷戦期、北朝鮮は、社会主義陣営と資本主義陣営の対立の最前線だった。
1950年、北朝鮮は中国・ソ連の支援を受け、統一を目指して韓国に侵攻。アメリカを中心とする国連軍が韓国に味方して激戦が繰り広げられた。朝鮮戦争だ。1953年の休戦で、朝鮮半島は北緯38度線で北と南に分断され、北部はソ連、南部はアメリカが占領。やがて、それぞれが独立し、南北朝鮮の分断は固定された。
北緯38度線は、人工的にひかれた国境線で、山などの自然の要塞があるわけではない。よって、侵入は容易だ。北朝鮮と中国の国境にある鴨緑江や豆満江も簡単にわたることができるので、北朝鮮は、北からも南からも侵入されやすいという地理的条件下にある。
冷戦が終結すると、中国やソ連は韓国と国交を樹立。後ろ盾を失った結果、北朝鮮は核開発を「カード」として大国の援助を引き出す「瀬戸際外交」を本格化させ、1990年代以降現在まで、核実験やミサイル発射を繰り返している。