本田は2010年の南アフリカ大会、14年のブラジル大会、18年のロシア大会とW杯に3度出場。全ての大会でゴール&アシストを挙げる史上6人目の快挙を達成している。今回の解説でも日本代表のことを「ウチ」と呼び、愛着の強さを感じさせる。一方で、年下の選手たちに敬意を払う。日本代表で共にプレーしたり、交流があったりする選手にはユウト(長友佑都)、マヤ(吉田麻也)、ヒロキ(酒井宏樹)、タケ(久保建英)と愛称で呼ぶ一方、それ以外の選手たちは「前田(大然)さん、伊東(純也)さん」とビジネスマナーで「さん付け」を貫いた。
逆転勝利が決まった際は、「とりあえずまだ落ち着こ。まだ決まってないからね。結局もう1試合勝たないといけないのは確実だから。とりあえずよくやった。とにかく一喜一憂しないようにしないで次につないでほしい」と冷静な口調に。試合後にスタジオから解説を絶賛されると、「ワインがあったらもっと面白くできる。飲酒解説ありにしましょう。常識変えましょう」と本田節で笑いを誘った。
ワールドサッカー・ダイジェストの前編集長で、現在はフリーのエディターとして活動する大類聡氏は、本田の解説をこう振り返る。
「純粋に面白かったですね。W杯はサッカーを詳しく知らない視聴者も多い。本田選手はヨーロッパのトップレベルでプレーしていた選手なので戦術面をもっと掘り下げて話すこともできるはずですが、難しい言葉を使わずにわかりやすく、視聴者に寄り添う姿勢で解説していた。ピッチリポーターの槙野選手に積極的に話しかけるなど、従来の解説者にはないスタイルだったのも新鮮でした。個性的なキャラクターで世間に認知されているし、視聴者は本田圭佑に小難しいコメントを求めていない。本人が求められている発言をどこまで意識しているのかわかりませんが、自分の思っていることを素直に口にする一方で、感情的にはならず監督や選手に敬意を払っていたことが好感を呼んだと思います」
本田はドイツ戦に続き、27日のコスタリカ戦でも解説を担当する予定だという。
「W杯に3度出場して優勝を目標に掲げていたが、ベスト16が最高だった。今も悔しい思いが当然あるはずです。日本代表の後輩たちがグループステージを勝ち上がり、さらにベスト8に進出した際は感情を爆発させるのか、それよりもっと上にいった時はどんな発言をしてくれるのか。日本代表の快進撃と共に、本田選手の解説も楽しみです」(大類)
W杯の戦前は日本国内が盛り上がっていないことに懸念の声がメディアから多く聞かれたが、ドイツ戦のジャイアントキリングにより、日本列島は熱狂の渦に包まれている。鮮やかな「解説者デビュー」を飾った本田の今後の発言にも要注目だ。(今川秀悟)