撮影:大西正
撮影:大西正

 ところが、「特に考えがあってセレクトするのではなくて……」と漏らす。

「ばーっと、モニター上で写真を見ていくなかで、何か感じたものをパンパンと選んでいく。要は写真を撮るときと同じで、特に考えずに、何か感じたものをもう一回、モニター上でスナップしている感覚です。それを何度も何度も繰り返すうちに、ぼくの中の何かが最大公約数として選ばれて、写真になる」

 最大公約数とは、何なのか?

「多分、何かに反応しているから、その写真を選ぶわけなんですけれど、例えば、1回目に夜おなかがいっぱいのときに選んで、2回目に早朝起きてすごく元気なときに選ぶとか、気分も時間帯も違うときに選び直している。そうすると、ぼくの状況とは関係ない、ぼくの何か、根幹にあるものが選ばれていく。最大公約数というのはそういう意味です」

 それが何なのか、何を考えているのか、知りたいから写真を撮っているのではないかと、大西さんは言う。

「何かをねらっていくよりも、あるがままに撮ったものを何度もセレクトを繰り返したほうが、より自分の本質に近づけのではないか。それで、こういう撮り方になった。でも、最初からこういう撮り方ではなくて、気持ちの変化があった」

撮影:大西正
撮影:大西正

■「こんな写真を撮るの、やめちゃえば」

 大西さんが街でスナップ写真を撮るようになったのは2014年ごろだった。

「きっかけは、インターネットで見たストリートスナップでした。面白い世界があるな、と思った。それまで撮影してきた旅のスナップとはぜんぜん違う、もっと踏み込んだ世界。ウイリアム・クラインや森山大道さんの写真集も見て、これはすごいぞ、と。しかも、こんなに身近な場所で撮れるんだ、と思いました」

 初めて個展を開いたのは16年。「シマシマ都市―Zebra The City―」の図録には、こう書かれている。

<出会った街景から「ゼブラ=シマ模様」に注目して、モノクロームでスナップ撮影しました。写っているのは誰でも普段目にしているありふれた風景ですが、グラフィカルに、平面的に捉えることにより、主張しあう街と人との関係性を浮き彫りにして、日常への興味を促すとともにその面白さを共有したいと考えています>

 当時の作品は、撮影コンセプトありきで「とにかく、構図だったり、タイミングだったり、面白い瞬間を見つけよう、という感じで撮ったものでした」。

 ところが、「『大西君さあ、もう、こんな写真を撮るの、やめちゃえば』と、写真の先輩に言われたんです。ただ、そのときは、意味がわからなかった」。

「写真の先輩」というのは、やはり新宿などを撮影している星玄人さんである。

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